シリアで起きた爆発事件
2015年、中東地域は依然として紛争やテロなどで不安定な状況が続いています。2010年から2012年までアラブ世界で発生した大規模な反政府デモ、いわゆるアラブの春は今もなお、この地域を破壊し続けています。こうした中東は2015年、激しい戦場でありながら、今まで最悪となった難民危機、及び、全世界に広がっている過激なイスラム聖戦の発祥地でもあります。
この数年、世界各国のメディアは中東地域について報道するとき、「暴力」や、「不安定」、「紛争」、「テロ」などの言葉をよく使っています。2015年、ISイスラム国家というテロ組織の台頭により、中東地域は国際メディアにさらに取り上げられました。ISはシリアとイラクをはじめ、中東地域全体だけでなく、ヨーロッパとアジアでも活動を広げており、世界の安全保障を脅かしています。
混乱は地域全体
中東地域で、混乱な状態が拡大することにより、シリアは最も大きな被害を受けた国です。この5年、シリア内戦で死亡した人は25万人にのぼり、数百万人は避難生活を余儀なくされました。シリアはアメリカやロシアなど世界大国とISとの戦場だけでなく、影響力拡大について大国同士の競争の場でもあります。ロシアの戦闘機がトルコ軍に撃墜された事件はその証と言えます。
また、ISとの戦いでは、中東諸国の人々はもちろん、地域外の人々も被害者になっています。ISがロシアの旅客機を爆発させ、224人の乗客と乗組員を殺害した事件、及び、129人の死者と350人以上の負傷者が出たパリ同時テロ事件が挙げられました。そして、ヨーロッパへの数百万人の難民流入は、欧州諸国にとって最悪の悪夢となっています。
他の中東諸国でも、不安定が続いています。リビアでは、2つの政府と2つの国会が共存しており、民族和解政府の設立に向けた交渉は難航しています。そして、イエメンでは、2015年に内戦が起こっており、2万8千人が死亡しています。この内戦は中東地域におけるイスラム教のシーア派とスンニ派の大きな戦争になる恐れもあります。
さらに、パレスチナとイスラエルの和平プロセスはそのまま行き詰っています。国連総会は12月、パレスチナを「国家」と認める決議を賛成多数で採択しましたが、イスラエルはこれを拒否しました。これにより、ガザ地区で、パレスチナの人々とイスラエル軍の衝突が起き、数十人が負傷しています。これは、双方の和平交渉の早期再開に終止符を打ったとみられています。
積極的な兆しは1つだけ
しかし、こうした中東地域は、2015年、1つの積極的な兆し見せています。それは、イランと欧米など6カ国がイランの核問題で歴史的な合意に達したことです。この合意は、数十年続いているイランと欧米諸国の緊張を緩和させ、新たな戦争の可能性を回避する合意だとも評されています。そして、中東地域の大国であるイランと西側諸国との関係改善は地域の多くの問題解決につながると期待されています。
こうした中東地域の行方について誰もが予想できないでしょうが、最後の目的である平和な地域づくりという道のりはきっと遠いかもしれません。